Essays & Music

⭐︎Here is to you (the ballad of Sacco and Vanzentti)

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チャンスをつかむ人

ある日、上京していた時のこと。
小包を出したくて、宅配便か郵便局がないかと探していた。

ふと、「恵比寿アトレの6階に郵便局があったような気がする」と、曖昧な記憶を頼りにエスカレーターで上がっていった。けれど案内看板は見当たらず、本当にあるのだろうかと不安になる。それでも記憶を信じて奥へ進むと、ひっそりと郵便局を見つけた。

思わず、ほっと息が漏れた。

窓口で小包を出しながら、私はつい口にしてしまった。
「案内が見当たらなくて、このフロアにあるのか心配になりました。もう少し分かりやすいと助かるのですが…」

すると、対応してくれた女性職員は少し申し訳なさそうに笑って、
「そうですよね、伝えておきますね」
とやわらかく答えてくれた。

そして、私の書いた住所に目を留めて、ふっと表情を明るくした。
「岩手の方なんですね。私も岩手出身なんです」

その一言で、ぐっと距離が縮まった気がした。

ふと窓口に置かれていた「紅マドンナ」の注文書が目に入る。美味しそうだなと思って見ていると、彼女が笑って言った。
「それ、私も注文しちゃいましたよ」

その言葉に背中を押されるように、私も思わず注文してしまった。

翌日。
荷物が増えた私は、また同じ郵便局を訪れた。

すると、昨日の彼女がいた。
「お煎餅が入っているので、“ワレモノ”のシールを貼ってくださいね」と言うと、
「もうご用意してますよ」
と、少しおどけた調子で返してくる。

思わず笑ってしまった。こんな人と一緒に仕事ができたら、きっと毎日が楽しいだろうな、と思った。

帰り際、彼女が尋ねてきた。
「明日はどちらへ行かれるんですか?」

「幻冬舎に行く予定なんです」と答えると、
「本を出されるんですか?」と目を輝かせる。

「まだ先のことだけど、ペンネームは決めているの。“マダムエフ”って」

そう言うと、彼女はその名前をメモして、大切そうに胸ポケットにしまった。

その仕草を見て、胸がじんと熱くなった。
先の見えない不安の中で、見知らぬ誰かが自分を応援してくれている——それだけで、心が軽く弾むのを感じた。

さらにその翌日。
友人も「紅マドンナを食べてみたい」と言うので、また郵便局へ足を運んだ。

お昼時で彼女の姿はなかったが、注文を書き終えた頃、休憩から戻ってきた彼女が私に気づいた。
そして、嬉しそうに再会を喜んでくれた。

さすがに、もう会えないと思っていたのかもしれない。どこか寂しそうな表情を見せた彼女に、私は言った。
「よかったら、メールをください。また会えますから」

旅を終えて帰宅すると、彼女からのメッセージが届いていた。

きっと、あの時、私たちは同じように何かを感じていたのだと思う。年齢も環境も違うけれど、こうして私たちは友人になった。

今では毎日LINEをするほどの、大切な存在になっている。

ほんの小さなきっかけでも、心を動かされた瞬間に一歩踏み出せる人は、きっとチャンスをつかむ人なのだろう。そして彼女は、これからもきっと、素敵な出会いを見つけていくに違いない。

素敵な出会いに感謝して…

Here is to you (the ballad of Sacco and Vanzentti)

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