Essays & Music

⭐︎ i am

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⚫︎桑の実を食べた娘⚫︎

私の実家のあたりには、お蚕さんを育てる家があった。養蚕という仕事が、まだ身近にあった頃のことだ。

小学生だった私は、祖母の知り合いが営む桑畑に、毎日のように遊びに行っていた。夏の陽射しをたっぷり浴びた桑の葉は青々として、触れると少しざらりとしていた。

かいこは桑の葉しか食べない。
畑で桑を育て、毎日新鮮な葉を摘み、日に何度も与える。やがて大きくなったかいこは、静かに糸を吐き、自分の体を包む「まゆ」を作る。その小さなまゆから、白く美しい絹が生まれるのだと、私は教わった。

その家には、高校を卒業したばかりの息子さんがいて、家業を手伝っていた。私たちは桑の葉を摘みながら、鳥の巣を見つけて歓声をあげたり、草むらで蛇を見つけて驚いたりした。

彼は「コウ君」と呼ばれていた。

山あいの小川を石でせき止め、水をためて即席のプールをつくる。水が十分にたまると、私はためらいもなく服を脱ぎ、裸のまま飛び込んだ。恥ずかしい、という感情をまだ知らなかった頃のことだ。水は冷たく、光はきらきらと揺れていた。

夏休みにその家へ泊めてもらう夜、私は無邪気に「コウ君と一緒に寝る」と言って、彼の布団にもぐりこんだ。ただ、そばにいると安心した。遠い記憶の中で、やさしく触れられたような感触だけが、あたたかさとともに残っている。

ある日、コウ君の留守中にベッドで本を読んでいると、ベッドの下から少しはみ出した雑誌に気づいた。そっと引き出してみると、それはいわゆる大人向けの雑誌だった。

そこには、私とはまるで違う、成熟した体つきの女性たちが写っていた。やさしくて大好きだったコウ君の、知らなかった一面。子ども心に受けた小さな衝撃は、桑の実を口に含んだ日の甘酸っぱさと一緒に、今も思い出される。

桑の実は、熟すと深い紫色になり、指先を染める。
あの日の記憶もまた、幼い私の心をほんの少しだけ染めたのかもしれない。

久しぶりに I Am を聴いた。
軽やかなリズムとは裏はらに、胸の奥から、あの夏がよみがえる。

今日は、[i am ]という曲を…

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